
鶏肉のコンフィは、フランス料理の伝統的な調理法のひとつ。
低温の油でじっくり火を入れることで、しっとり柔らかく旨味を最大限に引き出すことができる。
ホテルやレストランではもちろん、家庭でも作れる便利な料理だ。
今回は、鶏肉のコンフィの基本から家庭でも実践できるレシピ、さらにはスチコンを使った調理法まで徹底的に解説していく。
コンフィの基本と歴史

コンフィとは、フランス料理の保存調理法のひとつで、もともとは「肉を油でゆっくり加熱し、そのまま油に漬けて保存する」技術として発展した。
鴨や豚が一般的だが、鶏肉を使ったコンフィも人気が高い。
コンフィの最大の特徴は、低温でじっくり火を入れることで肉がとろけるような食感になり、かつ長期間保存できる点にある。
現代では保存目的というよりも、独特の旨味と食感を楽しむための料理として広まっている。
コンフィの語源と発祥
- 「コンフィ(Confit)」はフランス語で「保存する」という意味を持つ。
- 中世フランスのガスコーニュ地方で発展し、主に鴨の脂に漬け込んだ「カナール・コンフィ(鴨のコンフィ)」が有名。
- もともとは冷蔵庫のない時代に、肉を腐らせずに保存するための技術だった。
鶏肉コンフィの魅力
- しっとり柔らかく仕上がる。
- 鶏の旨味をしっかり閉じ込められる。
- 低温調理のおかげで、パサつかずジューシーな仕上がりになる。
- そのままでも、焼き目をつけても美味しい。
鶏肉のコンフィは、家庭でも作りやすいのが魅力。
油の温度管理さえ気をつければ、専門的な機材がなくても作れる。
鶏肉の部位別コンフィの特徴

鶏肉のコンフィは、部位によって仕上がりが大きく変わる。
代表的なのは「もも肉」と「むね肉」のコンフィ。
どちらも美味しく作れるけど、それぞれの特徴や調理のポイントを押さえておくことで、より理想的な仕上がりになる。
鶏もも肉のコンフィ
鶏もも肉は、コンフィにすると特に美味しく仕上がる部位。
適度な脂肪とコラーゲンを含んでいるため、低温の油でじっくり火を入れることで、とろけるような食感に仕上がる。
鶏もも肉のコンフィの特徴
- しっとりジューシー:脂が多いため、パサつかず柔らかい仕上がりになる。
- 旨味が濃厚:じっくり火を入れることで、鶏の旨味が凝縮される。
- 骨付き or 骨なしで違いが出る
- 骨付き:より深い味わいが楽しめるが、火の通りに時間がかかる。
- 骨なし:扱いやすく、火の通りも早い。
鶏もも肉のコンフィの作り方のコツ
- 下味をしっかりつける:塩とハーブでしっかりマリネしておくと、味がしっかり染み込む。
- 低温でじっくり火を入れる:80℃の油で2~3時間加熱すると、最高の食感になる。
- 仕上げに焼き目をつける:皮をパリッと焼くと、食感のコントラストが楽しめる。
鶏むね肉のコンフィ
鶏むね肉は脂肪が少なく普通に加熱するとパサつきがち。
でもコンフィにすれば驚くほどしっとり仕上がる。むね肉のコンフィは、ヘルシー志向の人にもおすすめ。
鶏むね肉のコンフィの特徴
- 低脂肪でヘルシー:ダイエットや健康を意識している人にぴったり。
- しっとりとした仕上がり:低温で調理することで、パサつかず柔らかくなる。
- 味が染み込みやすい:淡白な肉質なので、ハーブやスパイスの風味がよく馴染む。
鶏むね肉のコンフィの作り方のコツ
- 塩分濃度に気をつける:むね肉は塩を吸収しやすいので、マリネ時間を短めにするとよい(1~2時間程度)。
- 温度はやや低めがベスト:70~80℃くらいの油で2時間ほど加熱すると、しっとり仕上がる。
- 仕上げのアレンジが重要:そのままでも美味しいが、サラダやパスタに加えると食べやすい。
鶏肉のコンフィの伝統的な作り方

ここからは、鶏肉のコンフィの作り方を説明していく。
先に伝えるのは、フランス発祥の伝統的な調理法だ。伝統的なコンフィ作りの基本を知っておくことも一流の証だ。
必要な材料と下処理
まずは、コンフィを作るために必要な材料と下準備のポイントを押さえておこう。
必要な材料(2~3人分)
- 鶏もも肉 or 鶏むね肉(骨付き or 骨なし)……2~3枚
- 塩……肉の重量の1%(約5g/1枚)
- にんにく……2~3片(軽く潰しておく)
- ローズマリー or タイム……2~3本
- ローリエ……1枚
- 黒こしょう(粒)……小さじ1
- オリーブオイル or ラード……適量(肉が浸るくらい)
下処理の手順
- 鶏肉に塩をすり込む
- 肉の表面と裏側に均等に塩をなじませる。
- できれば1時間~一晩冷蔵庫で寝かせると、しっかり味が入る。
- 長時間漬ける場合は、塩分を控えめにする。
- 香味野菜とスパイスを準備
- にんにくは軽く潰しておくと、風味がよく出る。
- ハーブやローリエは肉と一緒に漬け込んでおくと香りがよくなる。
- 余分な水分を拭き取る
- 塩漬け後、キッチンペーパーで余分な水分を拭き取る。
- 水分をしっかり取ることで、油の中で余計な水分が出るのを防げる。
- 肉を常温に戻す
- 調理する30分前には冷蔵庫から出して、常温に戻しておく。
- いきなり加熱すると火の通りが悪くなるため、これは重要なポイント。
鍋で作る伝統的な調理方法
何度も伝えているが、コンフィは低温の油でじっくり加熱するのがポイント。
- 鍋に鶏肉と香味野菜を並べる
- できるだけ重ならないように、均等に並べる。
- 肉がしっかり浸るまで油を注ぐ
- オリーブオイルやラードをたっぷり注ぎ、肉が完全に浸かるようにする。
- 油が少ないと均等に火が入らず、部分的に硬くなる。
- 極弱火でじっくり加熱(80℃以下)
- 油の温度が80℃以下をキープするのが重要。
- 気泡がほとんど出ないくらいの温度がベスト。
- 2~3時間じっくり煮ることで、ほろほろの食感になる。
- 仕上げに表面を焼く(お好みで)
- コンフィはそのままでも美味しいが、皮をパリッと焼くと食感が良くなる。
- フライパンで強火で皮を焼くと、香ばしさがアップする。
低温調理でのポイント
- 温度管理が命:80℃を超えると、肉が硬くなるので注意。
- 焦らずじっくり:時間をかけることで、鶏肉の繊維がほぐれて柔らかくなる。
- 保存も可能:コンフィは冷蔵保存すれば1週間はもつ。
家庭でおすすめのコンフィの作り方

コンフィは本来、低温の油でじっくり火を入れる料理だけど、家庭でやるとなると「温度管理が難しい」「大量の油を使うのは大変」といった悩みが出てくる。
そこでおすすめなのが炊飯器を使ったコンフィ作り!
炊飯器なら、一定の低温でじっくり加熱できるので、ほぼ放置で美味しく仕上がる。
しかも、鍋やオーブンよりも手軽で失敗しにくいのがポイントだ。
炊飯器を使った鶏肉のコンフィレシピ
ここでは、炊飯器を使った基本の鶏もも肉コンフィを紹介する。
基本の鶏もも肉コンフィ
【材料(2人分)】
- 鶏もも肉……2枚
- 塩……小さじ1(肉の重さの1%が目安)
- にんにく……1片(スライス or つぶす)
- オリーブオイル or サラダ油……大さじ3~4(ジップロックの場合)
- ローズマリー or タイム……1~2本
- 黒こしょう(粒)……小さじ1
- ローリエ……1枚
【作り方】
- 鶏肉に塩をすり込み調味料を馴染ませる
- 両面に塩をすり込み均等になじませ、にんにく、ハーブ、黒こしょう、ローリエを加えてラップ(又はビニール袋)で包み1時間ほど冷蔵庫で寝かせる(しっかり味が入る)。
- 炊飯器に鶏肉と材料を入れる
- 炊飯釜にオリーブオイルを入れ、鶏肉を重ならないように並べる。(オリーブオイルはひたひたに)
- ジップロックに入れる方法
- 鶏肉をジップロックに入れ、オリーブオイルを加えて軽く揉む。
- 空気を抜いてしっかり密閉し、炊飯器の内釜に80℃前後のお湯を入れて沈める。
- 炊飯器の保温モードで3〜5時間加熱
- スイッチを入れたら、あとは放置でOK!
- 途中で1~2回ひっくり返すと均等に火が入る。
- 仕上げに表面を焼く(お好みで)
- フライパンで皮目をカリッと焼くと、香ばしくて美味しい!
- 魚焼きグリルやオーブンで焼いてもOK。
炊飯器で鶏肉コンフィを作る際の注意点
炊飯器で作る場合は手軽だけど、いくつか気をつけるべきポイントもある。
温度管理の重要性
コンフィは75℃前後の低温でじっくり加熱するのがポイント。でも、炊飯器の保温モードは機種によって温度が違うので、次の点をチェックしよう。
- 最適な温度は「低めの保温」(75℃前後)
- 高すぎると肉がパサつくので要注意!
- お湯の温度を測る(ジップロックの場合)
- 最初に80℃前後のお湯を炊飯器に入れると適温をキープしやすい。
- 途中で温度が上がりすぎないか確認(ジップロックの場合)
- お湯が熱くなりすぎる場合はフタを少し開けて調整。
焦げつきを防ぐためのポイント
炊飯器を使う場合、焦げつきを防ぐコツも知っておくと失敗しない。
- 直に入れる場合は油をしっかりなじませる
- 鶏肉が底にくっつかないように最初にオイルを入れてから鶏肉を入れる。
- ジップロックを使うと焦げつかない
- オイルを控えたい場合はジップロック調理が便利!
スチコンを使ったコンフィの作り方

スチコン(スチームコンベクションオーブン)は、給食施設や飲食店などの業務用厨房でよく使われる調理機器。
スチームと熱風を組み合わせて調理できるのが特徴でコンフィ作りにも最適だ!
スチコンは温度管理がしやすく大量にムラなくしっとり仕上げる事が出来るので、ホテルや給食での大量調理にも向いている。
スチコンを使うメリット
スチコンでコンフィを作る最大のメリットは温度管理が簡単で均一に火が通ること!
✅ スチコンのメリット
- 温度を細かく調整できる
- 低温(75℃前後)をキープしやすいので、肉がパサつかない。
- 大量調理が可能
- 給食や仕込みに便利!一度に10~20枚の鶏肉も調理可能。
- 油の量を減らせる
- フルオイルで煮る必要がなく、低脂質なヘルシーコンフィが作れる。
必要な材料と下処理
【材料(10人分・業務用向け)】
- 鶏もも肉……10枚
- 塩……肉の重さの1%
- にんにく……5片(スライス or つぶす)
- オリーブオイル or サラダ油……適量(スプレーで軽くまぶす程度でもOK)
- ローズマリー or タイム……適量
- 黒こしょう(粒)……小さじ2
- ローリエ……2~3枚
【下処理の手順】
- 鶏肉に塩をすり込む(前日に仕込むのがベスト)
- 塩をまんべんなくなじませ、にんにく、ハーブ、黒こしょう、ローリエと一緒に冷蔵庫で一晩寝かせる(最低1時間)。
- スチコン用のホテルパンに並べる
- バット or ホテルパンにクッキングシートをひいて鶏肉の皮目を上にして並べる。
- オイルを軽くなじませる(スプレーで吹きかけるのも◎)
- しっとりさせるために、軽くオイルをまぶしておく。
- クッキングシートを被せてから蓋をする。
温度設定と調理時間
スチコンの設定がコンフィの仕上がりを左右する !
【基本の設定】
- モード:コンビモード(スチーム+熱風)
- 温度:75~80℃(じっくり加熱)
- 湿度:80%前後(スチーム多め)
- 時間:3時間以上
👉 低温×長時間でじっくり火を入れるのがポイント!
【美味しく仕上げるコツ】
実はコンフィのポイントは油ではなく温度にある!油を使っても使わなくても味や柔らかさは変わらない事がわかっている。
- 温度を80度以下にキープする。
- 肉が重ならないように並べる。
- 最後に180℃のホットモードで5分仕上げると表面が香ばしくなる。
鶏肉コンフィで失敗しないためのポイント
スチコンを使うと失敗しにくいが、それでも注意すべきポイントがある。
❌ 失敗しやすいポイントと対策
失敗例 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
パサつく | 温度が高すぎる(80℃以上) | 75~80℃をキープ しよう! |
硬くなる | 加熱時間が短い | 3時間以上じっくり加熱する |
味がぼやける | 塩が足りない | 前日から塩をすり込んで寝かせる |
鶏肉コンフィのアレンジレシピ

じっくり低温調理された鶏肉コンフィは、そのまま食べてもおいしいけどアレンジ次第でさらに楽しめる!
ここではホテルで人気のアレンジレシピや付け合わせのアイデアを紹介する。
鶏肉コンフィを使った人気レシピ
1️⃣ 鶏コンフィのサラダ仕立て(フレンチ風)
👉 さっぱりヘルシーに食べたいときにおすすめ!
【材料(2人分)】
- 鶏もも肉のコンフィ……1枚(ほぐす)
- ベビーリーフ……適量
- ミニトマト……5個(半分に切る)
- レッドオニオン……1/4個(スライス)
- オリーブオイル……大さじ1
- バルサミコ酢……大さじ1
- 粒マスタード……小さじ1
- 塩・こしょう……少々
【作り方】
- コンフィの鶏肉をほぐし、軽く焼き色をつける。
- 野菜と一緒に盛りつける。
- ドレッシング(オリーブオイル・バルサミコ酢・粒マスタード)をかけて完成!
✅ ポイント
👉 鶏肉のコクにバルサミコ酢の酸味が合う!
2️⃣ 鶏コンフィのガーリックライス
👉 ガッツリ食べたいときにぴったり!
【材料(2人分)】
- 鶏コンフィ……1枚(刻む)
- ごはん……2膳分
- にんにく……2片(みじん切り)
- バター……10g
- 醤油……大さじ1
- 黒こしょう……少々
【作り方】
- フライパンにバターを熱し、にんにくを炒める。
- 鶏コンフィを加え、軽く焼き色をつける。
- ごはんを加えて炒め、最後に醤油を回し入れる。
- 黒こしょうをふって完成!
✅ ポイント
👉 鶏のうまみ×ガーリック×バターで食欲爆発!
3️⃣ 鶏コンフィのパスタ(オイル系)
👉 簡単なのに本格イタリアン!
【材料(2人分)】
- 鶏コンフィ……1枚(ほぐす)
- パスタ……200g
- にんにく……1片(スライス)
- オリーブオイル……大さじ2
- 唐辛子……1本(種を取る)
- 塩・こしょう……少々
- パセリ……適量
【作り方】
- パスタを茹でる(塩分1%のお湯で)。
- フライパンにオリーブオイル・にんにく・唐辛子を入れ、香りを出す。
- 鶏コンフィを加えて軽く炒める。
- 茹でたパスタを入れ、茹で汁を少し加えて乳化させる。
- 塩・こしょうで味を調え、仕上げにパセリをふって完成!
✅ ポイント
👉 ペペロンチーノ風に仕上げると、コンフィのうまみが際立つ!
鶏肉コンフィの付け合わせ提案
鶏肉コンフィはシンプルな味わいだから、付け合わせで変化をつけると楽しめる!
✅ 定番の付け合わせ
- マッシュポテト 🥔(濃厚な味わいが◎)
- グリル野菜 🥦(ズッキーニ・パプリカなど)
- バゲット 🥖(肉の脂と相性バツグン!)
✅ さっぱり系の付け合わせ
- キャロットラペ 🥕(甘酸っぱさがちょうどいい)
- ピクルス 🥒(酸味で口の中がリセット)
- グリーンサラダ 🥗(葉物野菜と一緒に)
✅ ちょっと変わった付け合わせ
- ラタトゥイユ 🍆(南フランス風に)
- アボカドディップ 🥑(クリーミーな味わいと◎)
- ブルーチーズソース 🧀(濃厚なチーズと組み合わせても美味)
最後に:鶏肉コンフィの食べるスタイル

ここまで、鶏肉コンフィの基本の作り方やアレンジレシピを紹介してきた。
だが、料理は美味しく作るだけじゃなく食べるときのマナーやスタイルも知っておくと、より楽しめぞ!
特に、ホテルやレストランでの食事では、ちょっとした気遣いがスマートな印象を与えるからな。
コンフィの食べ方とマナー
🍽️ ナイフとフォークを正しく使おう
鶏肉コンフィは柔らかく、ナイフを軽く入れるだけでほぐれるのが特徴。
🔹 左手にフォーク、右手にナイフ を持ち、肉を軽く押さえながら切ろう。
🔹 皮がパリッと仕上げられている場合は、ナイフの刃先でサクッとカットすると美しく食べられる。
🥔 ソースや付け合わせも一緒に楽しむ
コンフィはシンプルな味わいだから、ソースや付け合わせと一緒に食べるとバランスがいい!
🔸 マッシュポテトやラタトゥイユを少しフォークにのせて肉と一緒に口に運ぶのが◎。
🔸 ソースはパンを使って最後まで楽しむのもOK!ただし上品にな。
🍴 骨付きのコンフィはどう食べる?
骨付きの鶏もも肉コンフィは、お店によってはそのまま提供されることもある。
🔹 基本はナイフとフォークで骨から外しながら食べる。
🔹 ただし、カジュアルなビストロなどでは手で持って食べてもOKなことも!お店の雰囲気を見て判断してくれ。
鶏肉コンフィを存分に楽しもう!
じっくり低温調理された鶏肉コンフィは、シンプルながらも奥深い一品。
作る楽しみ、食べる楽しみ、アレンジの楽しみ……いろんな形で味わうのが一興!
「食べること」は、ただの栄養補給じゃなく、心を満たす時間でもある。
ちょっとしたマナーを意識しながら、ゆったりとコンフィを味わってみてくれ!