
ホテルやレストランの厨房で働く料理人にとって、限られた時間でお客様に見た目も味も満足いただける料理を提供することは重要である。
そこでおすすめなのが「インボルティーニ」
今回は、スチコンを使ったインボルティーニの調理について紹介する。
料理の意味や特徴、実際の調理方法までを具体的に解説するので、この記事を読めばすぐに現場で活用できるだろう。
インボルティーニとは?

まずはインボルティーニの基本を理解することが大切である。
意味や特徴を押さえておけば、単なるレシピを超えて「料理としての価値」を提供できるようになる。
インボルティーニはイタリア料理
インボルティーニとはイタリア語で「巻く」や「包む」という意味である。
肉や魚、あるいは野菜を使って具材を巻いて加熱する料理であり、日本でいうところの「肉巻き」に近い発想である。
ただしイタリア料理らしく、具材やソースの組み合わせに工夫を凝らすことで一皿がとても華やかになる点が特徴である。
鶏肉のインボルティーニは、鶏肉をシート状に開きチーズやハムに野菜を巻き込んで加熱することで仕上げる。
調理工程そのものはシンプルであるが、断面の彩りが美しいため前菜からメインディッシュまで幅広く応用できる。
ホテル厨房やレストランでインボルティーニを取り入れるメリットは次のとおりである。
- 見栄えが華やか:断面の彩りで高級感を演出できる
- 汎用性が高い:具材やソースを変えれば多彩なメニュー展開が可能
- 差別化になる:日本ではまだ一般的ではないため、他店との差別化につながる
つまり、インボルティーニは単なる料理以上に、集客力を持つコンテンツとして厨房で活躍できるのである。
それから、イタリアンの料理に興味のある方は、こちらの記事(【決定版】フレンチとイタリアン、どっちが好き?)でフランス料理と比較しながら説明しているの読んでいってくれ。
鶏肉のインボルティーニがホテル厨房で重宝される理由

インボルティーニの中でも鶏肉を使うレシピは、ホテル厨房で非常に扱いやすい。
なぜ鶏肉が選ばれるのか、その理由を理解すれば現場でのメニュー提案や調理の説得力が高まる。
コスト・見栄え・調理の安定性という3つの視点から解説する。
鶏肉はコストが安定している
ホテルやレストランの厨房において、食材コストの管理は極めて重要である。
牛肉や魚は市場価格に左右されやすく、季節によって仕入れが不安定になることが多い。
一方で鶏肉は年間を通じて安定した価格で仕入れることができるため、宴会やブライダルなど大人数に提供する場面に最適である。
- 牛肉:高級感はあるがコストが大きく変動する
- 魚:鮮度に左右されやすく、保存性に難がある
- 鶏肉:価格安定、扱いやすく、仕込み効率も良い
この理由から、鶏肉のインボルティーニは「高級感とコストバランスを両立できる料理」として評価されている。
見栄えが良く、写真映えする
鶏肉を開いて具材を巻き込み、カットして断面を見せることで皿全体が華やかになる。
色鮮やかな野菜やチーズを合わせれば、さらに見た目が引き立つ。
特に近年は、披露宴やパーティーで提供される料理がSNSに投稿されるケースが多く、映える料理=宣伝効果のある料理という位置づけになっている。
例:
- トマトソースと合わせれば赤の彩り
- ほうれん草を巻き込めば緑のアクセント
- モッツァレラの白で全体が引き締まる
断面の美しさは、盛り付けを工夫するだけで視覚的な満足度を高められる。
スチコン調理で均一な仕上がり
鶏肉のインボルティーニは、焼き加減や火の通りが難しい料理に見えるがスチコンを活用することで初心者調理員でも安定した仕上がりを得られる。
温度・湿度を一定に管理できるため、ジューシーさを保ちながら均一に加熱できるのである。
特に宴会や婚礼料理など、数十人分を同時に仕上げる場面では「失敗しない仕上がり」は大きな強みとなる。
披露宴やパーティー料理に採用すると、インボルティーニ鶏肉は「華やかで映える料理」としてSNSに拡散されやすい。これは無料の宣伝効果となり、次の集客につながる。単なる料理以上に、マーケティングの武器として機能する点が、ホテル厨房で重宝される理由である。
調理に必要な食材と準備

インボルティーニは具材やソースの組み合わせ次第で多彩なアレンジが可能である。
ここでは、鶏胸肉を使ったインボルティーニを紹介する。
鶏胸肉に加えてチーズやハムにほうれん草を使ったインボルティーニだ。
トマトソースやクリームソースで食べると絶品となる。
材料(約10人分)
- 鶏胸肉:5枚(1枚を半分に開いて10枚分にする)
- モッツァレラチーズ:200g
- 生ハム:10枚
- ほうれん草:1束(塩ゆでして水気を切る)
- 塩・胡椒:適量
- オリーブオイル:適量
- トマトソースまたはクリームソース:適量
仕込みポイントとプロの視点
- 鶏胸肉の下処理
- 鶏胸肉は厚みにばらつきがあるため、そのままでは火通りに差が出やすい。
- 包丁で横から切り込みを入れて観音開きにし、厚さを均一にする。
- ラップをかぶせ、肉叩きまたは小鍋の底で軽く叩いて整えると、仕上がりが均一で美しい。
- ほうれん草の下茹で
- 沸騰した湯に1%の塩を入れ、短時間で色よく茹で上げる。
- 冷水に落として鮮やかな緑を保ち、布巾でしっかり水気を絞る。余分な水分が残ると巻いたときにチーズや生ハムが滑りやすくなる。
- モッツァレラチーズの扱い
- チーズはスライスよりもスティック状にカットすると巻き込みやすい。
- 室温に戻しておくと、加熱時に均一にとろける。
- 生ハムの役割
- 塩味と旨味を与えるだけでなく、鶏肉内部の水分保持にも効果的。
- 1枚ずつ広げ、巻く直前に余分な油分を軽く拭き取ると仕上がりがさっぱりする。
巻き込み工程に入る前に、全ての材料をカット・整形して「巻き込みステーション」を作っておくこと。厨房では仕込みの流れを分業化しやすくなり、スピードと品質の両方を保てる。
インボルティーニ鶏肉の調理手順

インボルティーニ鶏肉の調理は、一見すると複雑そうに感じられるが、工程を押さえれば初心者でも安定した仕上がりが得られる料理である。
特にホテル厨房ではスチコンを用いることで火入れのムラを防ぎ、誰でも均一で美しい仕上がりにできる。
一方、家庭ではフライパンやオーブンを活用することで、ホテル品質に近い味を再現することも可能である。
「家庭向け」と「厨房向け」の両方の調理方法を解説する。
フライパンを使った家庭での基本調理
家庭にスチコンはないため、フライパンとオーブンや電子レンジを組み合わせるとよい。
- 下味・巻き込み
- 鶏胸肉に塩・胡椒を軽く振る。
- 生ハム → ほうれん草 → モッツァレラの順でのせ、手前から奥へしっかりと巻き込む。
- 焼き目をつける
- フライパンにオリーブオイルを熱し、中火で転がしながら表面に焼き色をつける(1〜2分程度)。
- 中まで火を通す
- オーブン使用:180℃で約12分加熱。
- 電子レンジ使用:耐熱皿に並べラップをかけ、600Wで4〜5分加熱(途中で向きを変えるとムラが防げる)。
- 仕上げ
- 食卓直前にカットし、断面を見せて盛り付ける。
- トマトソースやクリームソースをかければ完成。
- チーズの流出を防ぐため、カットは必ず提供直前に行う。
- フライパンでつける焼き目が、見栄えと香ばしさの両方を引き立てる。
スチコンを使った調理方法
ホテル厨房ではスチコンを使うことで、大量調理でも品質を均一に保てる。ただし、スチコンのサイズや仕込む量によって変わるので色々と試してくれ。
- 下味をつける
- 鶏胸肉の表面に軽く塩・胡椒を振る。味付けは控えめにし、具材の旨味を活かす。
- 具材をのせる
- 生ハム → ほうれん草 → モッツァレラの順で重ねる。
- 生ハムは塩気、ほうれん草は彩り、モッツァレラはバインダーの役割を果たす。
- 巻く
- 手前から強めに巻き込み、巻き終わりを下にして並べる。必要に応じて竹串や楊枝で固定する。
- スチコン調理
- コンビモード:180℃
- 湿度:40%
- 加熱時間:約12分
- 仕上げにグリルモードで2分焼き色をつけると華やかさが増す。
- 盛り付け
- 斜めにカットして断面を見せ、皿にトマトソースやクリームソースを添える。
- ソースを円を描くように流すと、ホテルらしい演出になる。
- 仕込み段階で巻いて冷蔵保管:大量調理では提供直前に加熱することで効率化が可能である。
- チーズ流出への配慮:加熱後にすぐ切ると溶け出すため、必ず提供直前にカットする。
インボルティーニの応用&メニュー展開

インボルティーニ鶏肉は、巻く具材やカット方法、ソースの種類を工夫することで、前菜からメイン、さらにはバイキング料理まで幅広く展開できる。
応用力の高さはホテル厨房において大きな武器であり、宴会やブライダルの多様なニーズに対応可能である。ここでは具体的な活用法を紹介する。
前菜用:一口サイズでピック仕立て
鶏肉のインボルティーニを小さめに巻き、スチコンで加熱後、一口サイズにカットしてピックを刺す。
ワンスプーン料理のような感覚で提供すれば、ブッフェや立食パーティーに最適である。
- ソースは少量をあしらう程度で、彩り重視。
- トマトソースやバジルソースを使うとイタリアン感が強まり、華やかさが増す。
メイン用:大ぶりにカットし付け合わせ野菜と提供
大きめに仕上げたインボルティーニを厚めにカットし、皿にしっかりと盛り付ければメインディッシュとなる。
- 付け合わせにはグリル野菜やマッシュポテトを添えるとボリューム感と高級感を演出できる。
- ソースはクリームソースや赤ワインソースを合わせればコース料理のメインとして十分通用する。
バイキング用:ソース違いで複数種類を展開
ビュッフェスタイルでは、同じインボルティーニでもソースを変えることで「別の一品」として提供できる。
例:
- トマトソース:定番で万人受け
- クリームソース:女性や子どもに人気
- バルサミコソース:大人向けの酸味で差別化
これにより、ひとつの仕込みで3種類以上のバリエーションを作り出せるため、厨房の効率も高まる。
- 「インボルティーニ鶏肉3種盛り」などセット化すれば、単価を上げつつ満足度も高められる。
- 見栄えが華やかなためSNS映えしやすく、披露宴やイベント料理で写真を撮られやすい。結果として自然な拡散効果を生み、集客に直結する。
まとめ:インボルティーニ鶏肉で厨房の安定感と差別化を

インボルティーニ鶏肉は、ホテル厨房における「安定」と「差別化」の両立を可能にする料理である。
料理名の由来である「巻く」という行為は、シンプルでありながらも高級感を生み出す調理法であり、披露宴や宴会といった非日常の場にふさわしい演出効果を持つ。
さらに鶏肉という食材は、
- 仕入れコストが安定している
- ヘルシーで幅広い世代に好まれる
- 部位の扱いやすさから大量調理に適する
といった特性を備えており、まさにホテル厨房にとって理想的な主力食材である。
また、スチコンを用いることで、温度と湿度を精密に管理できるため、初心者の調理員でも均一で安定した仕上がりを実現できる。
この点は人材育成の場でも有利に働き、厨房全体の生産性と品質の向上に直結する。
そして、応用展開も容易である。
- 前菜用のピンチョス仕立て
- メイン用のボリュームカット
- バイキングでのソース違いの提供
これらを組み合わせれば、メニューの幅が広がり、単価アップや集客力強化につながる。
インボルティーニ鶏肉は、コスト面・調理効率・見栄え・集客力のすべてを兼ね備えたホテル厨房の切り札である。
シンプルでありながら差別化を実現できるこの一皿を、ぜひ現場の即戦力メニューとして導入していただきたい。
インボルティーニは冒頭でイタリア語で「巻く」や「包む」という意味であると伝えたが、フランスにも巻く料理「シュー・ファルシ」がある。
シュー・ファルシはキャベツで包む料理である。日本で言うとロールキャベツだ。
興味のある方はこちらの記事(【保存版】プロが教えるシュー・ファルシの本格レシピ)で紹介しているので読んでいってくれ。